証券会社という金融業界のど真ん中に16年身を置いてきました。
その間持ち続けていたのが『違和感』。
その違和感とは、『自分達のやっていることは本当にお客様の、そして社会の役に立っているのか?』ということ。
その違和感に対する答えがここ数年で明らかになり、金融業界に留まらず、一般の方にも広く知れ渡り始めています。
その時ふと思いだしたのが、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツが1994年に述べたこの言葉でした。
『銀行機能は必要だが、銀行は必要ない。』
そしてその変化は、目に見えないものだけではなく、数字にも顕著に出始めています。
一例ですが、大学生(文系)の人気就職企業ランキング。
2017年には、4位に三菱UFJ銀行、6位に三井住友銀行、8位にみずほFGと10位以内にメガバンク3行がランクインしていました。大人気だったんです。
ですがそれからわずか4年。
2021年の同ランキングでは、三菱UFJ銀行が25位、三井住友銀行が31位、みずほFGにおいては50位以下と大きく順位を下げています。
元々僕の勤めていた証券会社は人気がなかったのですが、だからと言って、金融業界全体の人気がなくなっているのではないんです。
東京海上日動火災保険は5位から1位へ、損保ジャパンは9位から8位へ順位を上げています。
ちなみに、2121年の2位は第一生命、11位は日本生命というように保険業界は高い人気を集めているんです。
ということは、元々人気が低かった証券会社に加え、銀行も自分の人生を預けようと考えている学生から見限られ始めていることになります。
今回のブログでは、僕が金融業界に身を置き感じていた違和感と、先日読んだ鳥羽田継之氏著書である『なぜ信用金庫は生き残るのか』をもとに、金融業界が今後どう変わっていくのかを書いていきたいと思います。
銀行が置かれている状況
そのため近年は、投資信託や、保険商品、カードローンなどの販売にチカラを入れていましたが、ネット証券やネット保険の台頭により手数料の引き下げ圧力が増しており、それも盤石の状態とは言えません。
そのため現在メガバンクでも店舗の数を急速に減らしていますし、通帳を有料化したり、口座管理料の導入など『ムダを無くすこと』にチカラを入れています。
地方銀行に目を向けるともっと大変な状況です。
金融庁の指導により、地方銀行同士の統合が進んでおり、その数がぐっと減ってきていますし、店舗数を減らしている上に、1人の支店長が複数の店舗の支店長を兼務しているなんてことも珍しくありません。
メガバンクと比べ、地方銀行は営業地域が絞られますし、事業の幅が限定されるためどうしても苦しい状況に陥りやすいんです。
この苦境は株価にも反映されています。
PBRという指標を見ればそれがわかるのですが、PBRとは株価を1株当たり純資産で割ったもので、日本語では株価純資産倍率といいます。
一般的には数字が大きければ大きいほど成長が期待されているということになり、小さければ逆に将来が不安視されているということになります。
中でも、1倍を割れた場合は、『すぐに会社を解散させた方が株主にとっては得になる』と言われています。
2022年6月10日現在、PBRは、三菱UFJが0.54倍、三井住友が0.76倍、みずほが0.41倍となっており、メガバンク3行ともに1倍を下回っています。
地方銀行に目を向けてみると、全上場銘柄の低PBRランキング上位50銘柄のうち、38銘柄を地方銀行が占めており、トップの千葉興業銀行は0.13倍となっています。
銀行が置かれている状況の厳しさが見て取れるかと思います。
今後銀行はどうなるのか?
ですがこのムダとは、誰にとってのムダなんでしょうか?
銀行の顧客にとってのムダでしょうか?
それとも銀行にとってのムダでしょうか?
僕は、後者だと思います。
特に地方銀行においては間違いありません。
若者の多くはネット銀行を利用しているため、地方銀行の顧客の多くは高齢者や個人事業主、中小企業になります。
そういう方にとって支店やATMがたくさんあることがムダな訳はありませんし、支店が減れば、営業員も減りますので、行員が出向いてきてくれる回数も減ってしまします。
ということは、銀行の考えるムダは、顧客にとっては必要なものということになります。
銀行は株式会社ですから、利益を出すことが最大の目的になっています。
その点から考えるとムダを無くすことは決して悪いことではありません。
ですが、それにより顧客の信頼を失うようなことになるとすれば、明るい未来が待っているとは到底言えそうにありません。
PBRも現在の低い状況が続くと考えるのが自然だろうと思います。
台頭する信用金庫
東京商工リサーチが2021年に実施した全国の企業1,536,402社のメインバンク調査では、
メガバンク 23.40%
地方銀行 49.91%
信用金庫 21.90%
となっており、まだまだ銀行には及びませんが、2015年以来7年連続でシェアを拡大してきています。
ではなぜ信用金庫のシェアが伸びているのかですが、2つの理由があると考えています。
①信用金庫は生協や農協のように非営利の団体である
②営業エリアが狭いエリアに限られている
まず①ですが、信用金庫は銀行のように株式会社ではありません。
なので、一番の目的は、『利益を上げること』ではなく、『地域の利益のために働くこと』になります。
そして②ですが、信用金庫には誰でもお金を預けることができますが、お金を借りるには会員になる必要があり、会員資格を得るには、営業エリアに住んでいるか、働いていることが条件になります。
しかも営業エリアをカンタンに拡大することはできません。
そのため、信用金庫が店舗を減らすことはほとんどありませんし、一般的に金融機関にとってオイシイとされる高リスク商品を扱うことが殆どないんです。
そんな目先の利益に走ってしまったら、カンタンに信頼を無くし、立ちいかなくなってしまうからです。
信用金庫はその地域と運命共同体にあると言ってもいいかもしれません。
色々な分野でデジタル化が進む中、Face to Faceで人や地域とのつながりを大事にすることはすごく貴重ですし、地方経済を元気にするために欠かせないものだと思います。
非営利で、地域の利益のために働いてくれる信用金庫の存在が今後ドンドンと大きくなっていくのではないかと思っています。
まだまだ先かもしれませんが、『(信用)金(庫)は銀(行)よりも上』という時代が来るかもしれません。
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