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外国人旅行客は戻るのか?インバウンド再開も、コロナ前には戻らない3つの理由

外国人旅行客は戻るのか?インバウンド再開も、コロナ前には戻らない3つの理由

2022年5月26日夜、岸田首相が都内で講演を行いました。
そこで政府の大きな政策転換が2つ発表されました。

1つ目は、6月1日から1日あたりの入国者数の上限を現在の1万人から2万人に引き上げる(観光目的の入国も含む)こと。

2つ目は、6月10日から外国人旅行客の受け入れを再開することです。

入国の対象は新型コロナの陽性率による区分けで最もリスクの低いとされるアメリカや韓国、中国など98の国と地域が対象になり、感染拡大を防ぐため当面、添乗員付きのツアー客に限定するとのことですが、これによる年換算の追加経済効果は8.1兆円に上るのではないかと試算されています。

そして、2022年10月11日より入国者数の上限が撤廃され、ツアー以外の個人の外国人旅行客もおおよそ2年半ぶりに入国が解禁されました。

それ以外にもアメリカ、韓国、イギリスなど、68の国や地域から観光で訪れる短期滞在者のビザを免除する措置もされ、地方の空港や港でも順次、国際線に受け入れが再開されています。

出所:NHK


これによりほぼコロナ禍前の状態に戻ったと言っても過言ではないかと思います。

新型コロナで大きな打撃を受けた観光業や地域経済の回復につながることが期待される一方で、感染の再拡大を懸念する声や、訪日旅行客数が年間3000万人を超えていたコロナ前に戻るには時間がかかるとの指摘の声も上がっています。

そんな今回のインバウンド再開ですが、僕はコロナ前とは大きく変わったことが3つあると思っています。

今回のブログでは、その大きな変化についてお伝えをしながら、僕の考える『コロナ後のインバウンド像』もお伝えできたらと考えています。

目次

インバウンドとは?

いまや聞きなれた感のある『インバウンド』。

本来的には、「入ってくる、内向きの」などと訳されますが、ここでは「訪日外国人観光」という意味で使っています。

この言葉が使われるようになったのは、ここ10年ほど。

政府が2003年に観光立国を目指すと宣言してからは随分と時間がかかってしまいましたが、2015年の流行語大賞にノミネートされるなど誰もが知る言葉になりました。

ちなみにその年の大賞はインバウンドに関連深い『爆買い』でした。
懐かしいですね。

インバウンドの現状

ではそのインバウンドの現状(ブログを書いている2023年2月6日時点)はどうなっているのでしょうか?

一言で表すとすれば、『回復途上』だと思います。

前述したように、2022年10月11日より入国者数の上限が撤廃され、ツアー以外の個人の外国人旅行客もおおよそ2年半ぶりに入国が解禁されました。

それにより、外国人旅行客数は着実に戻りつつあります。
ですが、一部専門家が「外国人旅行客数がコロナ前に戻るのは2024年以降になるだろう。」と予想をしてるように、まだまだ道のりは長いというのが印象です。

ですが、中国政府が2023年1月8日に『ゼロコロナ政策事実上の終了』したことは大きな転機になるだろうと思っています。

現状ではその中国で新型コロナの感染が急増している関係で、日本が水際対策の強化に踏み切っているため、急激な中国人旅行客の増加は見込めそうにありませんが、正常化に向けた大きな一歩となることが期待できます。

そんな『回復途上』な現状ですが、例え正常化しても、コロナ前とは違う部分、大きく変わる部分が3つあると思っています。

【コロナ前との違い①】円安の進行

まず1つ目の大きな違いは、円安が進行していること。

コロナが始まったころはドル円為替が108円程度でした。
ですが2022年10月25日現在は約149円。(2023年2月6日現在132円)

実に40円以上円安が進んでいることになります。

この円安の進行により、外国人が日本へ旅行に来る費用が安くて済みます。
そのため円安は、外国人旅行客を呼び込むための大きなプラス要素になります。

コロナ前2019年の訪日外国人旅行客平均消費額は、15.9万円でした。
これを当時のレート(1ドル=108円)で換算すると、1,472ドルになります。

では、現在のレート(1ドル=149円)で換算すると、何ドルになるのでしょうか?
答えは、1,067ドル。

要するに外国人旅行客のドルベースでの消費金額が減っても、日本円ベースでは変わらないということ。

もし、2019年と同じように外国人旅行客が平均で1,472ドルを消費してくれたと仮定すると、円ベースでの消費金額は21.9万円。
なんと6.0万円も増える計算になります。

出所:Wedge ONLINE

コロナ前のように年間3000万人が日本を訪れると仮定すると、円安になったことによる経済効果は1兆8,000億円に上ります。
コロナに苦しんできたホテルや旅館、観光地にとっては大きな追い風になることが期待されます。

【コロナ前との違い②】観光魅力度ランキング

新幹線

2つ目は、2年に1度世界経済フォーラムが発表している『観光魅力度ランキング』において、117の国や地域の中から、日本が1位に選ばれたことです。

1位に選ばれるのは初めてのことになります。

出所:nippon.com

このランキングは、112の評価項目をもとにランキングしているのですが、日本の評価が高かった項目は、

・大型競技場の数
・殺人発生率の低さ
・モバイル端末普及率
・世界文化遺産の数
・無形文化遺産の数
・観光に関する検索数

などです。

そんな中、最も高い評価を受けたのが、『交通インフラ』

この項目においては、元々日本の評価は高かったのですが、近年、

・多言語表記が進んだこと
・外国人用のSuicaやPASMOができ、切符を買う必要がなくなったこと

を受け、日本の交通インフラは旅行客から今や世界最高の評価を受けています。

【コロナ前との違い③】中国人旅行客の減少

五稜郭

そして3つ目は、中国人旅行客の減少が予想されること。

コロナ前2019年には、約3,188万人の外国人旅行客が日本を訪れ、そのうちの約30%にあたる959万人が中国人旅行客でした。
また、旅行消費額を調べてみると、外国人旅行客は全体の34%を占めています。

ですが、その中国人旅行客はすぐに戻りそうにありません。

その原因は中国政府による過剰なまでのコロナ対策です。

中国最大の都市である上海を例にとってみると、4月・5月の2ヵ月間上海はロックダウン(都市封鎖)されていました。

その影響は、甚大なるもので、以下のような影響がありました。

・小売り5割減
・工業生産6割減
・旅客数99%減
・4月新車販売台数ゼロ

特に4月の新車販売台数ゼロについては、僕もかなりビックリしました。

こんな中国ですが、中国政府は、5月いっぱいでロックダウンを解除し、「6月末までに市民生活を全面的に正常化させる。」と発言しています。

そして10月25日現在、中国はこの「ゼロコロナ政策」を継続しています。(2023年1月8日事実状の終了)

相次ぐロックダウンによって景気が冷え込み、2022年の成長率目標を5.5%前後としていますが、第三半期の成長率は3.9%と絶望的な状況です。(第4四半期は2.9%、2022年通年では3.0%となりました。)

出所:読売新聞オンライン

2023年に入り、ゼロコロナ政策は事実上の終了となりましたが、それも、

①政策に対する国民の不満爆発
②政策に起因した、許容しきれない経済の減速

が理由だとされており、海外旅行よりも何よりも経済や国民一人一人の生活のの立て直しが急務となっています。

この事実から考えるとコロナ前のように日本へたくさんの中国人旅行客がやってくるのはまだまだ時間がかかるだろうと思います。

また、人口に関しても2023年中に中国は世界イチを明け渡すことになりそうです。

その相手はインド。

一人っ子政策の余波もあり、中国は少子高齢化が進み、数年前から人口減少へと転じていました。

もしかしたら中国のイケイケの時代は終わりを迎えつつあるのかもしれません。

インバウンドの歴史

時代によりインバウンドも変化を続けています。
ここではその変化の歴史をお伝えしたいと思います。

遡ること120年以上前の1893年(明治26年)、日本で初めて外客誘致専門の民間機関「喜賓会」が誕生しました。

当時の日本を代表する実業家で、2024年発行の新一万円札にも描かれる渋沢栄一が国際観光事業の必要性と有益性を唱え、訪日外国人をもてなす目的で設立したもので、海外の要人を多数迎え入れ、各種旅行案内書の発行などを行いました。

1912年(明治45年)には後に日本交通公社、JTBとなるジャパン・ツーリスト・ビューローが創設され、鉄道省の主導のもと、外国人への鉄道院の委託乗車券の販売、海外での嘱託案内所の設置など、訪日外国人観光客の誘致を行いました。

戦後も外貨獲得のために外国人旅行者の誘致に重きを置き、1964年(昭和39年)の東京オリンピック開催に向け、外国人旅行客を受け入れるインフラが整備されました。

ところが、先進的だった日本のインバウンドビジネスは、1970年(昭和45年)を境に成長が鈍化しました。その要因は大きく二つ。

①日本の観光業界が国内市場に重点を置いたこと。
②もう一つは、1964年に観光目的の海外渡航が自由化されたこと。

高度成長期には海外へ出かける日本人(アウトバウンド)が増加。1964年に22万人だったアウトバウンドは1971年(昭和46年)には96万人に達しました。

インバウンドについては、大阪万博開催の1970年にピークの85万人となりましたが、翌年の1971年にはアウトバウンドが逆転しました。

アウトバウンド、インバウンド

以降は円高の影響もあって、インバウンドよりもアウトバウンドの市場が大きくなり、1995年(平成7年)にはアウトバウンドが1530万人、インバウンドは335万人とアウトバウンドが5倍近くに増えました。

その翌年、1996年(平成8年)に、訪日外国人旅行者数を2005年(平成17年)時点で700万人に倍増させることを目指した「ウェルカムプラン21」を運輸省が策定しました。

また、2002年(平成14年)の日韓ワールドカップサッカー大会開催はインバウンドに追い風になりました。それでもアジアへのアウトバウンドが増加するなど、両者の開きは拡大する一方でした。

そこで、2003年(平成15年)、政府はビジット・ジャパン・キャンペーンを立ち上げ、国を挙げて観光の振興に取り組み、観光立国を目指す方針を示しました。

それから10年たった2013年(平成25年)、訪日外国人客数が目標であった年間1000万人を突破すると、新たに2020年までに2000万人、2030年までに3000万人にするという目標が掲げられました。

同年に2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、円安も追い風となり、2015年(平成27年)には訪日外国人客数1973万7000人を記録。2000万人まであと一歩に迫ると同時に、大阪万博が開催された1970年以来45年ぶりに、入国者数が出国者数を上回りました。

そして、2018年に目標を12年前倒しで3000万人を突破。

ここからは皆さんの知るところかと思いますが、これからというときに未曾有のウイルスである新型コロナウイルスが蔓延。
そして現在へと至っています。

コロナ後のインバウンドのあるべき姿

京都

これらの3つの大きな変化によりコロナ後のインバウンドはどう変わるのでしょうか?

ここからは僕の予想になりますが、外国人旅行客の多国籍化が進むと考えています。
特に東南アジアからの旅行客が急速に増えると思います。

現在、日本政府も中国からの旅行客が減ることを見越し、タイやシンガポールなど東南アジアの国々を中心に、オーストラリアやアメリカなど色々な国へ営業をかけているようです。

出所:やまとごころ

また、円安が進展していることや、旅行ができなかったストレスから来る『リベンジ消費』により旅行消費額はこれまで以上に増えるでしょう。

そして、今まで主流だった買い物などによる消費『モノ消費』から、貴重な体験の伴った消費『コト消費』へ大きくそして急速に変化していくと確信しています。

いずれにしても、大きく円安が進んだことにより、輸入品の値段が上がり物価上昇に苦しんでいる一方、輸出企業の製造拠点が海外に移転したことにより、輸出時の円安メリットを十分に享受できていない日本にとって、外国人旅行客、『インバウンド』の復活は、日本経済復活のカギになると思います。

コロナ再流行の観点から、あまり乗り気でない方も多いかとは思いますが、日本経済のためにみんなでインバウンド再開を盛り上げていきましょう。


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