2022年4月4日、東京証券取引所の市場構成が再編されました。
これは1961年以来約60年ぶりの出来事。
それまでは、
東証1部、東証2部、JASDAQ、東証マザーズ
の4市場が存在していたのですが、再編により、
東証プライム、東証スタンダード、東証グロース
の3市場になりました。
イメージ的に言えば、
東証プライム = 日本を代表する企業
東証スタンダード = 成熟企業
東証グロース = 成長企業
という感じです。
ではなぜ今回再編をすることになったでしょうか?
理由の1つは、市場構成をシンプルかつ明瞭にすること。
ですが本来の理由は他にあります。
その理由は、『最上位市場(昔は東証1文部、現在は東証プライム)の質を高めること』です。
当たり前ですが、上場する限りはどこの企業も最上位市場を目指します。
ですが、いきなり最上位市場へ上場するには高いハードルが設けられており、カンタンなことではありません。
そこで、『鞍替え制度』というのが導入されているんです。
その制度は、東証2部やJASDAQ,東証マザーズなどで、ある程度経験を積めば、本来の上場条件を満たしていなくても最上位市場へ鞍替え上場できるというもの。
上場企業数が少ないうちはそれでも良かったのかもしれませんが、近年はこの制度を利用して最上位市場へ鞍替え上場する企業が多くありました。
その結果、
東京証券取引所に上場している約3800社のうち実に57%が東証1部上場となっていました。
これはいくらなんでも多すぎますよね?
そうなれば最上位市場のブランド価値も質も下がってあたりまえ。
最上位市場の価値が下がるということは、日本の株式市場の魅力が低下するということ。
実際近年、取引量の低下にも悩まされていたようです。
これを改善することが、今回の再編の一番の目的。
さあ再編から1ヵ月以上が経ちました。
実際『日本の株式市場は魅力的なものになったのでしょうか?』
骨抜きになった再編
これは最上位市場である『プライム』の価値を高めるため。
この再編により、上場企業数はこのようになりました。
東証プライム 1839社
東証スタンダード 1466社
東証グロース 466社
再編直前、4月3日時点での東証1部上場銘柄数は2177社だったことを考えると300社以上は減ったことになりますが、
それでもまだ約半数は最上位市場である『プライム』に上場しており、効果が十分だったかと言われれば疑問です。
ではなぜこんな結果になったのでしょうか?
その一番の原因は『経過措置の導入』です。
実は、プライム上場の1839社のうち295社は上場維持基準を満たしていません。
基準達成に向けた計画を提示することなどによって、『当面の間、上場を認められている』ような状況なんです。
ここで最大の問題は『当面の間』という部分。
明確にいつまでにというのが決まっていないんです。
僕が骨抜きになったと感じている最大の理由はこの部分になります。
東証株価指数(TOPIX)の見直し
TOPIXは、外国人や機関投資家も参考にする、日本の株価指数の代表格の1つです。
見直し前は、東証1部に上場する全銘柄で構成されていましたが、今後は流通株式時価総額100億円以上の銘柄で構成されることとなりました。
ということは、東証1部に上場していた銘柄でも流通株式時価総額100億円以下の銘柄は構成銘柄から外れたはずですよね?
ですが実はここにも『経過措置』が導入されているんです。
それを『段階的ウエイト低減』といいます。
2022年10月末から2025年1月末まで3ヵ月ごとに10段階で構成比率を下げていき、ゼロにするというもの。
これは当面の間ではなく期日が決まっていますが、低減が始まるのは2022年10月から。
なんだか先延ばしのように感じてしまいます。
これに関しても効果が十分とは言えそうにありません。
新しく導入された指数の評判
そのうちの1つが先ほど紹介したTOPIX。
それ以外にも代表的なものとして、
日経平均株価
JPX400
東証2部指数
JASDAQ指数
東証マザーズ指数
などがありました。
そのうち、東証2部指数、JASDAQ指数は今回の市場再編に伴い廃止されました。
そして変わりに、誕生したのが、東証プライム市場指数、東証スタンダード市場指数、東証グロース市場指数。
それを受け、現在存在する代表的な指数は、
日経平均株価
東証株価指数(TOPIX)
JPX400
東証マザーズ指数
東証プライム市場指数
東証スタンダード市場指数
東証グロース市場指数
となっています。
もちろん注目されるのは新しく導入された3つの指数ですが、実はあまり評判がよくありません。
ほぼ同じパフォーマンス
「東証グロース市場指数はマザーズ指数とほぼ一緒」
という声が聞こえてきています。
実際に、4月4日の終値を100としてパフォーマンスを検証してみると、5月2日時点で、
TOPIX 97.17
東証プライム市場指数 97.17
東証マザーズ指数 84.35
東証グロース市場指数 84.72
となっており、異論を挟む余地はありません。
また、1日の売買代金もTOPIX構成銘柄と東証プライム市場指数構成銘柄で比べると約1%しか変わらないんです。
更新頻度1日1回
再編直後はその事実を知らず、
「システム障害が起きてるのか?!」
と思ってしまいました。
事前にあまり周知されていなかったこともあり、専門家でもびっくりした人が多かったそうです。
では取引終了後1日1回の更新頻度ならばなぜダメなのかですが、
『市場動向がわからない』からです。
頻繁に更新が行われると、
「朝は高かったのに下がってきたな。」
「あれ?急に上がってきたぞ!!」
などがわかるんです。
そうなれば、売ったり、買ったりという取引を誘発することができるんです。
日本株市場の魅力を増し、取引量を増やし、市場を活性化させることを目的に市場再編したはずなのに、これでは何の意味もありません。
また、少し難しい話ですが、リアルタイム更新でなければ先物の設定もできないと思います。
この件に関しては、関係各所からクレームが出たそうで、
「リアルタイムの方向でスピード感を持って検討中」
とのことですが、早くしないと、
「ほぼ同じやったら、リアルタイム更新のTOPIXやマザーズ指数でいいじゃん。」
となってしまう可能性が高いなと感じています。
60年ぶりに満を持して市場再編を行った訳ですから、現在のような骨抜きの内容では終わらず、
今後も日本株市場が少しでも魅力的になるように改善していってほしいなと思っています。
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